「ドライブ」

知り合いのガイドのEちゃんの体験談です。

昨年の春、
Eちゃんが彼氏さんと一緒に
開通直後のT・Kアルペンルートに行ったんです。

開通直後のアルペンルートは道路横の雪の壁がスゴクて・・・

でも、アレって、初めは盛り上がるけど、
ズぅ〜っと同じ雪の壁なので飽きちゃうんですよねぇ〜

行くなら、やっぱ初夏〜秋でしょうか。

まっ、それはともかくとして、

Eちゃんと彼氏さん、アルペンルートへと車を走らせていました。

「結構、混んでるな。これじゃ〜、予定通りにはとても着かないなぁ。」

「仕方ないわよ、開通したばっかりだから。 焦らずゆっくり行きましょ。」

まぁ、そんな感じで、
2人は色々と話しながらドライブを楽しんでいたんです。

で、
途中で車はあるトンネルに入ったんです。

「あれ、何か、急にガラガラになったな?」

そうなんです。
トンネルに入る前まで、交通量が多かったのに、
トンネルに入った途端、周りに車がいなくなったんです。

「おっかしいな〜。そんなに飛ばしてないのにな〜」

「まっ、いいんじゃない。 コレだったら少しでも早く着けるし。」

しばらく走ると
前方で、たくさんの工事作業員が道路を塞ぐように集まっています。

「ねぇ、あれ?」

「あぁ〜、工事かぁ〜!」

「他の車は、それで迂回したんだわ。」

「CD聞いてないで、ラジオで交通情報をチェックしとけば良かったな」

・・・と、
彼氏さんはスピードを落としながら近づいて車を止めました。
そして、車の窓から顔を出して、

「あのぉ〜、何かトラブルでもあったんですか?」

その声に振り向いた作業員達はとてもにこやかで、
それぞれ手に缶ビールを持っています。

なんと、トンネルの真ん中で酒盛りをしているんです。
彼氏さんは思わず、

「な、何されてるんですか? トンネルの真ん中で?!」

次の瞬間、
にこやかな作業員たちの顔が憎悪の表情に変わり、
つるはしやスコップを振り上げて2人の車に襲い掛かってきたのです。

「うわ〜!!」

作業員たちは2人の車を取り囲み、

ダン! ダン! ダン!

と、
窓を叩きます。
ボンネットにあがって来てフロントガラスを叩く作業員も・・・。

2人は恐怖のあまり、
声も出なければ、身動きも出来ません。

「あ・・・・あ・・・」

「た、助けて・・・誰か・・・」  

その時、

『ブーー、ブーー!!』

2人の車のすぐ後ろで、車のクラクションが鳴ったんです。
2人が思わず振り向くと、

「トンネルの中で止まってたら危ないだろっ!!」

すぐ後ろにワゴン車が止まっていて、
ドライバーが窓から顔を出して怒鳴っています。

我に返った2人が、自分たちの車の周りを見ると
作業員たちは消えていて、酒盛りの後もありませんでした。

そして、
何十台もの車が、二人の車を追い抜いて行ったそうです。