「人形」
北陸の景勝の素晴らしい温泉郷にて


先日、仕事でご一緒したガイドのYちゃんに聞いた話です。

その日の通された乗務員部屋は、
広くはないものの清潔感のある床の間付の和室でした。

「へぇ〜、これだったら、客用としても十分使えるレベルだわ。」

・・・と、ちょっと嬉しかったそうです。

まっ、乗務員部屋って、トホホなところが大半ですから。


そんな感じで、
上機嫌で夕食も済ませ、床に就いたのですが、
彼女は、深夜、枕元の大きな音に目を覚ますことになったんです。

ドタッ!!

「な、なに??」

ビックリして、電気を点けてみると
床の間に置いてあった日本人形が、彼女の枕元に倒れています。


「床の間の人形が、どうしてここに??」   

・・・そう言いながら、
彼女が枕元に落ちてる日本人形を拾い上げた、

次の瞬間!

「痛いっ!」 

指先に痛みが走ったんです。

思わず人形を投げ出して、指を見ると
人差指から血が出ています。

ちょうど針に刺された様な感じです。


そして、恐る恐る投げ出した人形に目をやると

「う、うそ!!」

人形がひとりでに立ちあがり、薄気味悪く笑ってて・・・口元には血が

「い、いやー! 助けてぇー!!」

Yちゃんが、部屋から逃げ出そうとドアノブを握ると
ドアノブが握り返してきて

「えっ! 何?」

見ると、
ドアノブが血だらけの人形の手首に

「いやー!!」

・・・彼女、そのまま気を失って


朝、気付くと、
彼女は布団の中にいて、部屋には何の異常もなくて・・・。

人形も床の間に置かれたままで。

「昨夜の出来事は夢だったの?」

・・・と、彼女が前髪をかきあげようとした時

「あっ・・・・・」

彼女の右手にはくっきりと小さな指の跡が・・・