「土産物コーナー」
(河原町)


観光ホテルの一階には、
必ずと言っていい程、土産物コーナーがありますよね。

その日、
ホテル側との打ち合わせに向かう途中、土産物コーナーの前を通ると、
お客様のBさんがガラスケースに入っている扇子を覗き込んでいます。

「扇子、買われるんですか?」

「あぁ、MoMoちゃんか。コレ、素晴らしいけど、値段がねぇ」
(10万円近いのです)

「ホント! 一流の作家さんの作品かしら。」

「だと思うんだけどね。」

「お店の方に聞いてみては?」

「そうだな。MoMoちゃんも一緒に聞いてくか?」

「うぅ〜ん、お付き合いしたいけど、私、今から打ち合わせなんです。」

小一時間後、宴会場
Bさん、私を見つけるなり、

「出た、出たんだよ、幽霊が!」

Bさんの話によると、
私と話した後、すぐ、近くにいた店員さんに声をかけたそうです。

この店員さん、四十代半ばの上品な感じの女性で、
とても解り易く丁寧に扇子の歴史から選び方まで教えて下さったうえ

「他の絵柄もありますので、すぐに、お持ち致します。」

・・と、
奥に入って行ったそうです。

でも、女性店員が何分待っても戻って来ないんです。
他の若い店員に事情を話すと

「それは、失礼致しました。すぐ見て参ります。」 

「お願いします。四十代半ばのSさんって方なんです。」

Bさんが、先程の女性店員の名札にあった名前を言うと、

「えっ、Sさんですか?」

「はい」

・・・と、
先程の女性店員の特徴を話すと、若い店員は

「しばらくお待ち下さい」

・・・と、
引っ込んだかと思うと責任者らしい男性が出てきて、

「お客様、本当にSとお話をされたのですか?」

「えぇ、丁寧に扇子の選び方を教えて下さいましたよ。」

「Sは、先週、交通事故で・・・」