「アロマの香り」
京都市 中京


その日、私が通された部屋は、旧館の乗務員部屋でした。
レトロとか昭和の時代を感じさせると言えば聞こえはいいけど、
ちょっとくたびれた感じもする和室でした。

一般客室の場合でしたら、時代に合わせて改装もするのですが、
乗務員の専用室ともなれば、まぁ、こんなもんです。

ただ、救いは、
部屋が広い事と何のハーブかは解らないけど、
とっても素敵なアロマの香りが部屋全体に漂っている事!

「うぅ〜ん、素敵な香り、癒されるぅ〜」 (*^。^*)

宴会の時にも、お客様方から

「MoMoちゃん、いい香りがするね。香水付けて来たのか?」

「へへぇ〜、私のお部屋、アロマの香りが素敵なんですよ〜。
 この香りは、その移り香・・・いいでしょ〜」

「随分、オシャレな部屋に泊ってるなぁ〜」

「羨ましいでしょ〜」

・・・なんて話をしていると、仲居さんが驚いたような顔で

「あの、添乗さん、お部屋、アロマの香りがするんですか?」

「はい、お気遣いありがと・・」

・・・って、
私がお礼を言ってるのに、
最後まで聞かないで走り去って行ったんです。

「な、何なの?」

 数分後、仲居がフロントの方と一緒に戻ってきて、

「MoMo様、ちょっと・・」

「はい?」

宴会を中座して廊下に出ると、

「MoMo様のお部屋の変更をお願いしたいのですが。」

「どうして?」

「その・・前兆でして・・」

「前兆? 何の?」

「いえ、それは・・・・(もごもご)」

結局、
追い立てられるように別室に。
まぁ、乗務員専用ではなく一般客室でラッキーだったのですが、
やっぱり???

で、後日、
会社の上司に聞いたところ、

「あぁ〜、そういえば、20年位前、
 アロマの香りで部屋を一杯にして自殺した女性客がいたなぁ〜」