「助けないで!」
大阪市 某シティーホテル


先日、
某警備会社の慰安旅行に添乗した時に、幹事の方から伺った話です。

十年程前の話
場所は大阪市内の某シティーホテル。

当時、まだ現場に出ていた彼は
このホテルで深夜の巡回を行っていたそうです。

深夜2時・・・
定時の巡回中・・パブの前を通った時のことです。

「コトッ・・・」
「ガタッ・・・」

とっくに営業時間が過ぎているにもかかわらず、
中から音が聞こえてくるのです。

「泥棒・・・?」

彼は気配を殺して部屋に入り、電気を点けました

「誰かいるのか?」

しかし、
部屋の中には、誰もいません・・

「おかしいな・・空耳かな・・?」

その時、

「うっ・・」

という声が・・・、

声のする方に行って見ると、
血の海と化したフロアーに女性が倒れてます。

着ている制服からこのホテルの従業員のようです。

「大丈夫ですか?」

「死なせて下さい、私を助けないで、このまま、ここで死なせて・・。」

辺りを見ると睡眠薬のビンとカッターナイフ。
睡眠薬を飲んで、手首を切ったに違いありません。

本人が「死なせて」・・・と言ってるとしても、
まさか、見て見ぬ振りも出来ません。

「すぐ、救急車を呼びますから!」

彼は彼女にそう言いました。

「いや、やめて、死なせて・・・」

彼は彼女の言葉を無視して、119に電話。
次に、
彼女の手首をハンカチで縛って止血をした後、
指を彼女の口に入れ、睡眠薬を吐き出させました。

5分後、
救急車が到着。

「ちょっと、待ってて下さい、呼んで来ます。」

しかし、
彼が救急隊員と4階の部屋に戻って来た時には、
彼女の姿もフロアーの血も睡眠薬のビンもカッターナイフも
消えていたんです。

「そんなバカな!」

彼は、これまでの事情を隊員に話しました

「私達は、貴方がウソを言ってると思ってませんよ。
血だらけの貴方とフロアーの上のハンカチを見ればわかります。」

「それに・・・、実は・・・、ちょうど去年の今頃でしょうか・・・
ここの同じ場所で、従業員の女性が自殺してるんですよ。
睡眠薬を飲んで、手首を切って。
もしかしたら、たぶん・・・・」

「えっ・・・・」

話によると、
ここのバーテンダーと不倫関係にあった女性従業員が、
将来を悲観しての自殺だったそうです。

彼は今でも

「死なせて」

・・・と、
言った時の彼女の虚ろな目が脳裏から離れることはないそうです。

このホテル・・・当然、現在も営業中です。