「足摺岬」


お客様R香さんから伺った話です。

4年程前の夏、
R香さんがMさん、Yさんの仲良し3人組で、
四国は高知県足摺岬に行った時のことだそうです。

真っ白な灯台に、美しい水平線と断崖絶壁。
白山同門から望む太平洋の大海原。

本当なら、
最高の夏の思い出になるはずでした。

駐車場に車を置き徒歩約15分で、灯台に着きます。

「ねぇ、知ってる足摺岬って、実は自殺の名所でね、夜な夜な・・・」
「やめてよ、Y! 私、そういうの苦手なんだから」
「もう、Mは、あいかわらず、怖わがりね・・」

R香さん達は、
そんな事を話しながら、歩いていたのですが、。
10分位歩いた頃、
急に、Mさんが、胸を押さえて、座りこんでしまったのです。

「くっ、苦しい」
「M、どうしたの?、ねぇ、大丈夫?」
「うっ、うぅ〜・・・・」
「M、M、大丈夫?」

すると、今度は急に、
何事も無かったかの様には立ち上がり、
岬に向かって早足で歩き始めたんです。
R香さんとYさんは、驚いて、Mさんの後を追いかけたそうです。

「私、もう生きていられないわ。 ナオ・・ナオ・・ひどい・・」
「M! 何言ってるの?」

Mさんは、まるで別人の様になって、
R香さん達の言葉は、全く届いていない様子・・・

「死ななくちゃ、早く、早く、死ななくちゃ。」

そう言うと、
Mさんは絶壁に向かって走り出して

「やめてぇー」

その時、
近くにいた大学生達が、とっさに、彼女を捕まえてくれて、

「M! M!」
「あれっ、2人ともそんな顔して、どうしたの?」

Mさんは、その間の出来事は何一つ憶えていなかったそうです。