「じゃのめ」
山形県Y温泉


地元のガイドさんに伺った話です。

彼女が
散歩がてらに温泉街をうろついていると
急に雨が降ってきたんだそうです。

「ひぇ〜」

仕方なく、
お土産屋さんをブラブラしながら、
雨が上がるのを待っていると
お店の前を
彼女の泊っているホテルの名前が入った
『じゃのめ』の傘が通っていきます。

「ラッキー!!」

「○○ホテルに戻られるんですか?」
「はい」
「良かったぁ、雨も降り出すし困ってたんです。」
「そうですか。どうぞ、傘に入ってください」

傘の主は、
土産物を持った30才位のきれいな女性。
2人で雑談しながらホテルに戻る
エントランスの10mほど手前まで来た時、
傘の女性が、

「あっ、ひとつ買い忘れた物があるわ」
「あっ、どうぞ、お店に戻って下さい。もうソコがエントランスですから」
「すみません、じゃぁ」
「ありがとうございました。」

彼女は、女性にお礼を言うと
小走りでエントランスに飛び込みました。
すると、
ホテルマンが

「大丈夫ですか? タオルお持ちしました」
「へっ?」

彼女、改めて自分の姿を見ると、全身が雨でびっしょり

「あれ? ど、どうして、傘に入ってたのに」
「いいえ、雨の中をゆっくり歩いておられましたよ」
「そんなぁ、女の人と2人で、ここのホテル名の入ったじゃのめの傘で・・・」
「いいえ、お一人でしたよ。
 それに、もう何年も前からじゃのめは置いていないんですが」

そこに、話を聞きつけたマネージャーが

「当ホテルのじゃのめ傘に入ったこられたとか?」
「はい、でも、今は置いてないって・・・」
「え、えぇ。 30才位の女性とご一緒だったとか?」
「はい、でも、どうして30才位って解るんですか?」

マネージャーの話によると
30年程前、
買い忘れたお土産を買いに戻ろうと道路に飛び出して
亡くなられたお客様がおられて・・・