「山歩き」
塩見岳から見える某山
(山の名前は、秘密だそうです)
先輩のNさんの大学時代の話です。

1年生の夏、
サークルの仲間と夏山登山に行ったそうです。

彼女と親友Eさんは、山が初めて。
はしゃぎ過ぎて疲れ果て、2人だけ休憩する事になったとか。

先輩達には、
「お前達は、ここで待っていろ」と言われたそうですが、
若さと、好奇心一杯の2人は、
「遠くに行かなきゃ大丈夫よ」と、 散歩気分で歩き始めたそうです。

迷わないように少しだけのつもりだったのですが、気がついた時には、
もう帰り道がわかりません。
歩いても歩いても、元の場所に戻れません。

途方にくれていると、
帽子から靴まで全てモノトーンの男性が、前から歩いてきたそうです。
山を歩く時は自然色ではない目立つ色を着るのが一般的なので、 変な人と思いつつも、その男性に道を尋ねたそうです。

すると男性は何も言わずに、ある方向を指差したんです。
2人が指差す方へしばらく歩いていくと、 また、その男性が・・・・。

「どういうこと?、いつ、私たちを追い越したの??」
「あの・・・」と、話し掛けようとすると、
また黙って、ある方向を指差します。

話せないのかな?、二人はそう思いながら、
また、指差す方向へ歩き出したそうです。
すると、また・・・、
男性は黙って指差しています。

「この人、おかしい、もしかしたら・・・・・」

すると、次の瞬間、
その方向から先輩達が走ってきたんです。
「お前ら、あの場所でジッとしてるように言っただろ!!!」
「どれだけ、心配したと思ってるんだ!!」

「すっすみません」

ほっとして気がつくと、
その男性は、消えていたんです。

「あれっ?、今ここに・・・」

男性の事を先輩達に話すと、先輩達の顔色が変わりました。

実は、その山には迷った人を助けてくれる、モノトーンの男性の霊の話が伝わっていて、 その霊は昔、山で亡くなった彼女達のサークルの先輩なんだそうです。

その山の名前は、言ったらダメなんだって。
夏でも雪が残っていることで有名な山なんだけど・・・。