「痛い・・・」
沖縄県


地元のガイドさんに伺った話です。

深夜・・・・、
「うぅー・・・・うぅー・・・」
という苦しげな声を聞いた様な気がして、彼女は目を覚ましました。

蒲団の中から部屋を見渡してみたが誰もいないし、
物音ひとつしていません。
変な夢でも見たのかと思って、
また、そのまま目を閉じたのですが・・

「うぅー・・・痛い・・・苦しい・・」

今度ははっきりと聞こえたので、飛び起きてみると
部屋の隅にボロボロというかズタズタの軍服を着た旧日本兵が
横になった姿勢で宙に浮いているのです。

ちょうどベッドにでも寝かされているような感じて・・
余りの事に

「キャァーー」

と悲鳴を上げると
その日本兵は彼女に気づき、起き上がるとこう言ったのです。

「あぁー、君、看護婦さんだね、助けてくれ、とても、とても・・痛いんだ」

見ると、左手が肩から千切れていて血が噴き出しています。
左足もひざから先はありません。

「看護婦さん、見てないで、助けてくれよ・・痛いんだ・・・」

彼女は逃げ出そうにも腰が抜けてしまって逃げることが出来ません。

「兵隊さん・・貴方はもう死んでるんです。戦争は終わったんです。
 どうか、天国に行ってください・・・」

・・と、手を合わせながら祈ったそうです。

「何を言ってるんだ、私は生きているよ、こんなに痛いのだから・・・」
「いいえ、貴方は死んでいるんです。成仏してください」

その日本兵は、自分が死んでいることを認めようとせず、

「嘘だ!!」

と怒鳴ったかと思うと、片手片足のまま空中を這うようにして
彼女のほうに凄い形相で向かってきたそうです。

「イャァー、助けてぇ〜!!」
次の瞬間、

部屋のドアが開いて、部屋の灯りがつき
隣室のドライバーとホテルマンが部屋に飛び込んできました。

「大丈夫ですか!」

そう、彼女の悲鳴を聞いて、ドライバーが助けに来てくれたのです。

「あ・・・あそこ・・・兵隊さんが・・・」

しかし、そこにはもう誰もいませんでした。
ホテルマンが言うには・・・
このホテルの敷地は、戦時中には野戦病院があったそうなのです。
おそらく、
ちゃんと供養もせず、ホテルを建てたのに違いありません。
そして、
あの兵隊さんはきっとこの野戦病院で亡くなった方なのでしょう。