「おいで」
M県 A温泉街


A温泉街から近い磊々峡は、
N川の両岸に奇岩怪石がいくつも重なり合う奇勝です。
川岸には遊歩道も整備されているので、
A温泉に宿泊する殆どの方が訪れます。
散歩にちょうど良い距離だったりもするんですよね。

そして、
磊々峡の景色とN川の水の流れる音が相まって
「あぁ〜、自然っていいよなぁ。 来て良かったぁ。」
って、
とっとも満足した気分に浸れるよすな素晴らしいのです。

でも、
夜になると、

「こっち・・・こっちに来て」

・・・と、
女性の声が川の流れに混じって聞こえてくるというのです。

「こっち、こっちよ。 こっちに来て」

声のするほうに歩いていくと、
川面に白いワンピースを着た長い髪の女性が立っていて、
「こっち、こっち。 早く!」
・・・と言った感じで手招きをしているのです。

「何事??」
・・・と思い、
そのまま近づいていくと
女性の身体の肉が急に「ズルッ」と腐ったように落ち、
半骸骨化した姿で飛びついて来て、
そのまま川の中に引きずり込もうとするのだそうです。

知り合いのガイドさんに聞いたところ、
十数年前、
この辺りの川原で若い女性が遺体で発見された事があって、
警察は自殺ということで処理をしたそうなんですが、
地元では、自殺するような場所ではないので
当時から「事件」ではないかと噂していたそうです。

そして、
「こっち、こっちよ」
・・・と呼ぶ声が聞こえ始めたのも
ちょうどこの頃だというのですが・・・・?!


ちなみに私の周りでも
女の声が聞こえてきた・・・
白い服の女性がいた・・
なんていう体験者は何人かいます。
ただ、
川に引きずり込まれる・・・というのは噂の域を・・・ってか、
夜中に川面に立ってる女に近づくようなチャレンジャーはいないよね。