「転落死」
伊豆
某ホテル乗務員部屋 


伊豆といえば、何と言っても海の幸!
タカアシガニ、伊勢エビはもちろん、珍しい深海魚なんかも頂けます。
この深海魚ってのが結構美味しくて、皆さん、ビックリされるんですよ!

ってことで、
今回の話は3年程前、
お仕事でよくご一緒させて頂いてるガイドのTさんが
露天風呂から眺める夕景が美しい某ホテル・・・・での体験談です。

その日、
彼女が通されたのは6階の乗務員部屋。

深夜、
小さな女の子が母親を捜す声に、彼女は目を覚ましたんです。

「ママぁ〜・・・ママぁ〜・・・どこ行ったのぉ?」

彼女が枕元の携帯電話で時間を見ると1時を過ぎています。
(何でこんな時間に子供の声がするわけ? いったい何処の部屋?)

彼女はそう思いながら
布団をかぶり直したんですが、子供の声は依然として聞こえてきます。

「ママぁ〜、どこ行ったのぉ? ママぁ〜、グスン、グスン」

(無責任な母親ねぇ〜、子供おいて何処行ってるの?! 可哀想に・・)

 トタ、トタ、トタ、トタ・・・・「ママぁ〜、ママぁ〜」

どうやら、
部屋中を走りまわり母親を探している様子です。

(ちよっと可哀想すぎる。フロントに連絡して、母親を捜してもらおう・・)

そう考えた彼女が布団から起き上がろうとした・・・その時!
布団の足元あたりを小さな影が横切ったんです。

 トタ、トタ、トタ、トタ・・・・

「ママぁ〜、どこ行ったのぉ? ママぁ〜、グスン、グスン」

 トタ、トタ、トタ、トタ・・・・

「ママぁ〜、ママぁ〜」

隣の部屋から聞こえてくるとばかり思っていた子供の声は
なんと、自分の部屋から聞こえていたんです。
彼女は余りの出来事に腰が抜けてしまって身動きが取れず、
恐怖のため声も出ません。

 トタ、トタ、トタ、トタ・・・・

「ママぁ〜、ママぁ〜」

小さな影はひとしきり部屋を走り回ると
窓を開けベランダに出ると柵を乗り越えて落ちていったそうです。
そして、
しばらく静寂が流れた後、再び・・・・

「ママぁ〜、どこ行ったのぉ? ママぁ〜、グスン、グスン」

何度も何度も
母親を探してベランダに出ては転落を繰り返すのです。

彼女は布団を頭からかぶると
「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏・・・・」と唱え続けました。
どれくらい時間がたったのか、
気づいたたときには子供の声も気配もなくなっていたそうです。


翌日、
観光地でのお客様待ちの時間中、
乗務員待機所でドライバーに昨夜の出来事を話していると
それを聞いた地元のガイドさんが次のような話をしてくれたそうです。

「3〜4年前なんだけど、
 そのホテルで3歳位の女の子がベランダから落ちて亡くなってるの。
 信じられないんだけど、母親は女の子を早く寝かせつけて、
 別の部屋に泊まらせていた愛人のとこに行ってたんだって。
 でね、
 守衛さんが深夜巡回中に中庭で女の子を見つけて、
 救急車やパトカーが来て大騒ぎになっているのに
 母親は彼とHしまくってたのか部屋から出てこなくて
 朝、部屋に戻って初めて女の子が死んだのを知ったんだって・・・」


この部屋、
その後もしばらくは乗務員部屋として利用されていたのですが、
余りにも苦情が多いことから、現在は開かずの間となっています。