「端部屋」


台数口の旅行や連泊の際などは、
ガイドさん、ドライバーさん達と外に一緒に飲みにいく事があるんです。
もちろん、
翌日の仕事に影響するような飲み方はしませんよ。

で、
この日もホテルの近くにある居酒屋に飲みに行ったんです。

11時半を少し回ってたかと思うのですが、
ホテルの正面まで帰ってくると、
ガイドさんの1人が

「あれ、私の部屋点いてる。ちゃんと消したはずなのに・・・」

見上げてみると、
私達、乗務員室があるフロアの端部屋の電気が点いています。
彼女は部屋が端部屋だったからすぐに気づいたんです。

「ほんとに消したの?」
「うん、Kちゃんが部屋に迎えに来て、消したの2人で確認したから」
「うん、確かに消したよ・・・」

そう話していると
灯りの点いた彼女の部屋の窓に人影が動くのが見えたんです。

「ど、泥棒・・・?」
「ど・・どうしよぉ」

普通ならホテル側に知らせるのですが、
アルコールも入っていた勢いで、
自分たちで捕まえて警察からの感謝状をもらおう・・・ってことに。

私達女性は危険だからホテルの外から窓を見張り、
男性陣は窓の下で待機するグループと
部屋に入るグループに分かれます。

しばらくすると、
端から二番目の部屋に灯りがついたんです。
そして、
窓の下で待機するグループの携帯に電話が・・・

「おい、電気も消えてるし、誰もいないぞ!」
「うん、それより、窓を開けて顔出してみて。」
「あぁ。」

すぐに
端から二番目の部屋の窓が開き、
携帯電話を持ったドライバーが顔を出しました。
そして、その瞬間
灯りの点いていた端部屋の灯りが消え、
人影も見えなくなったんです。

「ねぇ、今いる私の部屋、本当に端部屋だった?」
「あぁ、端部屋だ、隣は壁だったよ。」
「そう、じゃぁ、その壁の向こうにもう一室あるわ・・・」