「毛糸」
長野県 N


仕事でよくご一緒させて頂くドライバーのKさんの体験談です。

5年程前のことです。
彼は就寝前にテレビを見ながらビールを飲んでいるとき、
畳のへりとへりの間から毛糸が少し出ている事に気付いたんです。

「うん? どうして、こんな所に毛糸が出てるんだ?」

不思議に思った彼は
毛糸を爪先でつまみ上げると、引っ張ってみたんです。
すると
毛糸が次から次に・・・ドンドン出てきます。
まるで、
マジシャンがシルクハットから次々とハンカチを取り出すみたいに・・・

「どうなってるんだ? 畳の下に何があるんだ?」

彼は興味本位・・・というか意地になって、
づんづん毛糸を引っ張り続けたそうです。
そのうち
毛糸がうっすらと赤みがさしてきて

「???」

ついには、
ベトッ・・と手に濡れた感触が・・・

「うわぁー!」


見ると毛糸が真っ赤な血に染まっていて、毛糸をつたった血が

ポトッ、ポトッ、ポトッ・・・

・・と
畳に落ちていきます。


彼は慌ててフロントに電話。
飛んで来たフロントマンに状況を確認してもらうと
すぐに警察に連絡をしてもらいました。

自分たちで畳をめくって生々しい死体でもあったら怖いし、
もし、そういう事であれば、
勝手に畳をめくると現場を荒らすことになるかもしれない・・・ってことで、
彼とフロントマンは部屋の外、廊下で警察が来るのを待ったそうです。

十数分後、
2名のお巡りさんが到着。

早速、畳をめくってみると
そこには完全にミイラ化した死体があったそうです。
畳から出ていた毛糸は
そのミイラ化した遺体が着用していたセーターのもの。
但し、
遺体がミイラ化するほど時間が経っている為
毛糸についた血は完全に乾いていて、真っ黒になっていたそうです。

彼とフロントマンが見たときには、
毛糸はベットリと赤い血で濡れていたのに・・・・