「数が合わない?」


団体旅行やツアーでは、
飛行機、電車、バス等に乗る時や出発する時には、
必ず添乗員やガイドがお客様の人数の確認をしますよね。
修学旅行や社員旅行などでは、

「ちゃんと隣の人いますかぁ〜、前や後ろの人もいますよねぇ〜」

・・・とか言って、
手を抜く事もあったりしますが、
お客様を残して、次の目的地に移動することないように
私達は十分気をつけているんです。

たまぁ〜に、
人数が逆に多くなっていて、
よくよく見ると、知らない人がちょこんと座っている
・・・なんて事もあったりもするんですよ。

そうそう
怖い話の代表的なモノの中にも「1人多い」って話がありますよね。
心霊スポット等に行った後、喫茶店に入ったら、
3人しかいないのに、ウエイトレスが水を4つ持って来た・・・
・・・みたいな内容の話。

旅行業界の中でも
樹海や恐山、糠平湖等の観光帰りのバス後部座席に見知らぬ人が・・・
なんて話も結構有名だったりします。

私の先輩の10年以上前の体験談です。

神戸市内のある商店街の旅行会に添乗していたときの事、
場所は忘れちゃったそうなんですが、寺院観光の後、
バスの出発前にガイドがお客様の数を数えたんです。

「1、2、3、4・・・・・あれ?」
「1、2、3、4・・・・・まだ、お1人、お戻りじゃないようですので
 戻られるまで、しばらくお待ち下さい。」

すると
幹事さんが

「皆いるぞ〜、数え間違ってるんちやうか?」
「えっ、そうですか? 1、2、3、4・・・・・あれ? ホントだ」

その時は
先輩もガイドもお客様方も大笑いしてたんですが、
旅行を続けるうち、どんどん笑えなくなってきたんです。

観光施設に入る際に、そこのスタッフが人数を数えても
昼食場所のレストランに入った際にウエイトレスが人数を数えても
もちろん、
その後、バスに戻ってきて、先輩やガイドが人数を数えても
必ず1人少なく数えたんです。

「何か、気持ち悪いな。」
「人数数える時、誰か悪ふざけしてるんじゃ・・・」

お客様方は口々に不思議がっていたそうなんですが、
先輩とガイドと幹事さんは、ある事に気付いてたんです。

『数える時に、いつも見落とされる方がいる事を』

その方はHさんといって
40代前半の男性で、身体も大きく、にぎやかな方なので、
普通に考えたら、絶対、見落とすはずのない方なんです。
なのに、
観光施設のスタッフやウエイトレスだけでなく、
先輩、ガイド、幹事さんでさえ、見落としてしまうんです。

当然、
ご本人に、その事を伝える事などはせず、

「おかしいよねぇ〜」

・・・などと言いながら、
旅行会は特にトラブルもなく、無事に終了したそうです。

しかし、
3日程経ってから、
先輩が清算後の報告に幹事さんを尋ねた際、
思いもかけない後日談を突きつけられたんです。
Hさんが交通事故で亡くなられたと・・・

Hさんが人数を数える時、見落とされていたのは
もしかしたら事故死される予兆だったのかもしれません。