「禁酒法時代」
サンタモニカ(カリフォルニア州)


このホテル、
サンタモニカの中心部に太平洋を見下ろす様に建っているため
美しい夕陽を眺める事も出来るし、ショッピングにも大変便利なんです。
おまけに
3つ星ホテルといううこともあって料金も手頃だし、
アール・デコ調の雰囲気がとってもgoodなのです。

数年前、
私の大学時代の友人N君が
出張でこのホテルに宿泊した時の出来事です。

帰国を翌日午後に控えた夜の事、
同行した上司と2人、仕事の成功を祝って
ホテルのラウンジのカウンターでカクテルを楽しんでいると、
ふいに背後に人の気配を感じたそうなんです。

「うん?」

彼は何気なくビックリして振向いたのですが、そこには誰もいません。

(気のせいか・・・??)

しかし
彼が目線を戻して、飲み直し始めると
再び背後に人の気配を感じたそうなんです。
それも今度は自分のすぐ後ろ、
息遣いがハッキリと感じられるほどの距離です。

彼はビックリして振向いたのですが、やはり誰もいません。
しかし、
人の気配、息遣いを確かにそこに感じるんです・・スグ目の前に。

「N君? どうした?」
「あっ、いえ、何でもないです。」
「そぉか? 幽霊でも見たような顔してるぞ」
「そ、そんなぁ〜まさか・・・」

上司が気持ちよく飲んでいる時に、
無粋な事も言えないので適当にごまかしていると

「どうかされましたか?」

・・・と、
彼の様子を見ていたバーテンダー(?)が声を掛けてきたんです。
そこで彼は思い切って

「いえ、実は・・・」
「そうですか、気付かれましたか・・・」

バーテンダーの話によると
1920年代から30年代前半の前半にかけての禁酒法時代、
なんと、このジョージアン・ホテルには秘密酒場があって、
サンタモニカの富裕層が、毎夜、飲酒を楽しんでいたというのです。
そして、
それが今日まで残っていて私達を迎えてくれるんですが、
何時の頃からか、姿無き何者かも訪れるように・・・
いえ、住みつくようになったというのです。

姿の無い何者かは、
ゲストにも従業員にも決して迷惑をかけることはないそうですが、
大きな足音をたてて歩いたり、背後に立って様子を伺ったり、
時には、テーブルのグラスを動かすような悪戯をするというのです。
また、
お気に入りの従業員が出勤してくると、こう声を掛けるとか。

「おはよう、元気かい? 今日も頑張ろうぜ!」

うぅ〜ん、何を頑張るんだか??

ちなみに
彼の背後に現れた姿無き何者かは
彼がバーテンダーの話をしている間に、消えてしまったそうです。