「“8”」
福井県東尋坊
民宿 S○○

私たち添乗員は、お客さんと同じホテルに泊まる事が多いのですが、
ドライバーさんやガイドさんは、別の民宿に泊まる事があります。

この話は、先日、私が福井県三国町に行った時の話です。

旅行シーズンということもあって、その日もホテルは、満室で、
ガイドさんやドライバーさんは別の民宿に泊まる事になりました。
(このように他のホテル等に泊まることを “ 他館=タカン ” といいます)

そのS○○という民宿は、純和風の建物で、廊下側の窓越しに
中庭が見えるという、風流な造りだったそうです。

ガイドの彼女が、通された部屋は、十畳位の和室。
その部屋は、四方の壁に部屋を囲むように、古い掛け軸が2本ずつ、
計8本も掛けてあり、その前には、一体ずつ市松人形が飾ってあった
そうです

彼女が言うには・・・・、

「ちょっと危ない雰囲気あったけど、私は霊感がある方じゃないから、
大丈夫って思ってそのまま寝ることにしたの。
電気を消して、床につくと天井に8人の人間の顔が浮かんでたの。
部屋は真っ暗、でも、ハッキリと表情までわかるの。

武士、江戸時代くらいの若い女性、痩せた赤ちゃん、5歳位の女の子、
旧日本兵、40歳位の紳士、白髪の老人、髪の長い若い女性の8人。

7人はただ私をじっと見てるだけで悪意は感じなかったんだけど、
長い髪の若い女がすごく怖い顔で、睨み付けたかと思うと、
いきなり、私の顔に向かって突進してきたの。

私は、そのまま気を失なっちゃって、気がついたら朝になってて・・、
飾ってあった8体の市松人形の一つが私の枕元に転がっていたの」

その民宿は、当然、今も営業しています。