「一周忌」

その日は、
僕の婚約者、愛美の一周忌でした。

式を三ヵ月後に控えた彼女は愛車で買物に出かけた帰り道、
雨で濡れた路面にハンドルをとられ、カーブを曲がり切れず、
対向車の大型トラックと正面衝突・・・・・即死でした。

私は墓参りの後、
愛美とよく行ったスナックに向かいました。
二人の指定席だったカウンターに座り水割りを飲んでいると・・・

「お久しぶりね」

「洋子・・・・」

洋子は、
愛美と出会う一年ほど前に半年程つきあっていましたが、
その身勝手で嫉妬深い性格に我慢できず別れた女性です。

「元気ないわね。
 フッ、フッ、フッ・・・、私、知ってるわよ、
 あなたの婚約者、愛美さんだっけ・・・一周忌なんでしょ。」

「どうして、それを・・・」

「私、あなたの事なら何でも知ってるわ、そう、なんでもよ。
 愛美・・・あの女・・・・
 私からあなたを奪った報いね・・・死んで当然だわ!!」

「お、お前ぇ!」

「あら怒ったの? おぉー、怖い、怖い・・・・
 それじゃー、私は退散するわ。
 あっ、そうそう、コレあげるわ。
 私は、もういらないし・・・大事にしてね・・・」

洋子はそう言うと、
十数枚の写真を置いて立ち去っていきました。

「な、何だ! この写真は!」

私は、
その写真を見て愕然としました。
その写真は、
なんと、愛美の事故の瞬間を連続撮影した写真だったんです。

「洋子ぉー!!」

私は、すぐに店を出て洋子を探しました。
しかし、彼女はどこにもいません。

翌日、
私は友人に事情を話し、写真を見せ
洋子の事を調べてもらうように頼みました。

数日後
友人から電話がありました・・・震える声で・・

「洋子・・・・愛美さんの事故の前日に、自宅で首を吊って・・・」